父との再開3
その時、聞き慣れた声が響いた。
「兄さん!!」
Lの声だった。ヤマブシが拳を振り下ろそうとするのを止め、声の方に振り返る。「Lか……」ヤマブシの声には、かすかな動揺が混じっていた。
Lは素早くハルの隣に駆け寄る。
「バカが……おまえが来たところでどうにもならねェんだよ」とハルは低く吐き捨てるように言った。
しかしLはその言葉に怯むことなく、ハルに向かって穏やかな声で答える。「分かってるよ、そんなこと。兄さんやザマスでさえ苦戦している相手を、俺が倒せるわけないじゃん……でも…だからって俺だけ逃げるなんて事もできるわけない」
ヤマブシはLの言葉を聞いて、静かに笑みを浮かべた。「まったく、一体、誰に似て、こんな愚かな息子が二人も出来ちまったんだァ……?」そう言いながら、彼は恐ろしいオーラを放ち、ゆっくりと二人に向かって歩き出した。
ハルとLは二人にしか聞こえない声で会話を交わし始める。
「今のうちに逃げとけ。時間稼ぎくらいなら出来る」とハルが低く囁く。
「やだよ、そんなこと。男の生き恥になっちゃう」とLは軽く笑いながら答えた。
「一緒に死ぬ気かよ」とハルは眉をひそめた。
Lはその言葉に、ニッと笑みを浮かべた。「死ぬだなんて、物騒なこと言わないでよ。それに、何も考えずに此処へ来たわけじゃない」
「作戦が有るのか」とハルは問いかける。
Lは自信満々に頷いた。「とびっきりイイ作戦だよ」と言いながら、その笑みはどこか頼もしく感じられた。
ハルはその笑みに一瞬迷ったが、すぐに覚悟を決めた。「だったら、やるしかねぇな」と、再び拳を握りしめ、ヤマブシに向き直った。
Lは真剣な表情で言った。「フュージョンだよ、兄さん」
ハルはその言葉を聞いて、目を見開き、信じられない という顔をした。「おまえと……!? 冗談じゃねェ……!! それに、一度だって練習もしたことねェのに」と、否定的な言葉を口にした。
しかし、Lは諦めなかった。「俺だって、見たことがあるくらいだよ。でも、俺たちが強くなったってことを父さんに証明するために、ちょうどいいんじゃない?」と、自信ありげに続けた。
ハルは一瞬ためらったが、Lの言葉には一理あると感じた。父親であるヤマブシに、ただ逃げるわけにはいかない。自分たちの力を見せつける必要がある。
「それに、兄さんと俺が息を合わせれば、きっと上手くいくよ」とLは微笑んで言った。
ハルは心の中で葛藤したが、Lの言葉が彼を動かした。「迷ってる場合じゃねぇなァ……」と、決意を固めた。
何かを相談しているように見える二人を見たザマスは、「時間を稼ぐしかないか……」そう呟くと、ヤマブシに向かって攻撃をしかけた。
「貴様の相手は私だ!」ザマスが叫びながらヤマブシに突撃する。
「しつこい神だねェ……」ヤマブシは振り返りザマスと戦おうとする。
その一瞬の隙に、ハルとLはフュージョンの準備を始めた。
「行くぞ、L!」ハルは真剣な顔でLを見つめた。
「うん、兄さん!」Lは同じく真剣な表情で頷き、二人は同時に動きを始めた。
「フュージョン!」二人の声が重なり、彼らの身体が光に包まれた。その光は次第に一つに融合していく。周囲の空間が震え、二人の力が一つになった瞬間、全く新しい戦士がそこに現れた。
Lの黒い髪とハルの白い髪が絡み合い、斬新なグラデーションを作り出している。その髪は風になびき、左右の瞳は異なる色を放っていた。左目はLの黒い目を映し、右目はハルの青い目が輝いている。身体を包むオーラは白く、キラキラと光を放ち、彼の全身から力が溢れているように見えた。
「Lとハルが合体して……エハル、とでも名乗ろうか。」新しい声が、まるで二人の声が重なったように響いた。「俺はもう、おまえを親父だとは思わない。」エハルの瞳はヤマブシを真っ直ぐに捉え、揺るぎない決意がそこに宿っていた。
ヤマブシは一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐにそれを隠し、冷笑を浮かべた。「倒すべき者が一人減っただけだな、さぁ来い!」と挑発するように身構えた。
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